地震前に地震雲が現れるという話をよく聞きます。本当でしょうか?
地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています。
地震の前兆としての「雲」に関する研究は、過去に何度か発表されたことがあるのは事実で、雲と地震の関係が皆無であると断言はできません。しかしながら、過去の報告例は大地震の前にたまたま特異な雲の形態をみたことで、地震と特異な雲の形態を結びつけてしまうケースが圧倒的に多いのではないかと考えられています(その一方、地震が起きなかった場合には雲のことを忘れてしまいます)。
雲はその場の大気の状態や付近の山岳などの地形次第で、人間の目にはときに無気味な姿や謎めいた形となって、さまざまに現れます。従って、例えば竜巻状や放射状や断層状に見えたとしても、それが地震前兆なのかどうかを疑う前に、低気圧が接近中だったり近くに存在していないか、前線はないか、気圧の谷が上空を通過していないか、高さによって風向が食い違っていないかなど、まず気象の面から十分に検証することが大切です。荒木健太郎さん(気象研究所)のなゐふるの記事やFAQ 2-10もご覧下さい。(S、K)
一般の地震研究者が、雲と地震との関係はないと考える理由
一般の気象研究者も「地震雲」には否定的です。その理由は、 報告されている「地震雲」のほとんどが、飛行機雲、あるいは、巻雲・巻積雲や層積雲の変異パターンとして (つまり、「通常の雲」として)説明可能だからです。
たとえば、「くものてびき-十種雲形について」(著者:湯山 生 (著)、 日本気象協会気象情報部)や「雲・空」(著者:田中 達也 (著)、山と渓谷社)という本に、(通常の気象条件で説明できる)種々の雲の形がのっており、その中には、過去に「地震雲」とされてきた雲に酷似した「普通の雲」が載っています。(S、K)
「飛行機雲は成層圏あたりの高層に出る。中層に現れるそれは地震雲である」という説もあるようですが、特に夕方などは太陽光線の具合による上層の雲のコントラストなどで、実際より低く見える場合が多くあります。首都圏では、羽田・成田・横田基地等の飛行場があるので、離着陸する多数の航空機があり、飛行機雲に出合いやすく、その分高度の見誤りの可能性も高まります。従って、首都圏は、地震雲とされる飛行機雲を発見する可能性の高い場所ともいえます。
3-2.「交差する筋上の雲が地震雲である」という説もあるようですが、当然のことながら飛行経路が交差すれば、飛行機雲が交差して「交差する筋上の雲」ができあがります。(S、K)