2017年4月10日
日本ジオパーク委員会委員長 尾池 和夫
このたびようやく日本地震学会にもジオパーク支援委員会が発足することになりました。めでたいというより、ほっとしたというのが私の正直な気持ちです。その気持ちを日本地震学会の名誉会員の立場からも、お伝えしたいと思いました。
私は日本ジオパーク委員会の委員長に、2008年度の委員会の発足と同時に就任しました。その後、何とかこのジオパークの活動を、真に日本の市民のものとして定着させたいと願ってきました。ジオパークの活動は、何よりも日本列島の大地に暮らす日本の人びとにとって基本となる活動の一つです。世界にもまれに見る大規模なプレート境界の変動を特徴とする日本列島の大地に暮らす人びとです。
日本ジオパークの認定と世界ジオパークの推薦に関わる機関である日本ジオパーク委員会(JGC)には、関係の5学会である、日本地質学会、日本地理学会、日本第四紀学会、日本火山学会、日本地震学会から推薦委員が出ています。日本地震学会以外の学会にはそれぞれ支援組織ができておりますが、日本地震学会には明確な支援体制がありませんでした。その学会の名誉会員であり、日本ジオパーク委員会の委員長をつとめる私は、内心後ろめたい気持ちを持ち続けておりましたが、ようやくそれを払拭して、もう委員長の座を次の方に安心してバトンパスできるという気持ちになっております。
2016年には、JGCが日本ユネスコ国内委員会から登録審査業務の権限を持つ機関であると正式に認証されました。それにともない、日本地震学会におけるジオパーク活動の支援体制の必要性に関する強い意見があり、これらを踏まえて、関係5学会で唯一支援組織がなかった日本地震学会に、ようやく2017年度にジオパーク支援委員会が発足したのです。
今まで、「地震学を社会に伝える連絡会議」のもとで活動してきたジオパーク支援委員会準備ワーキンググループをもとに、いよいよジオパーク支援委員会として発足させることになりました。ニーズ調査に基づいた具体的な活動計画も準備されています。
今年、地震学会の鹿児島秋季大会の後には、ジオパーク巡検を開催します。この機会に、熊本地震の後、阿蘇ジオパークの状況も、現地でよく観察して学習してほしいと思います。以前にも申し上げましたが、関連学会の中では、地震学会が、大地を歩いていない研究者たちの一番多い学会です。この機会に地震学会の会員の皆さんに、大地を歩き、大地に触れて、地球を実感していただきたいと願って、支援委員会発足の挨拶といたします。
日本地震学会の皆さまの、ジオパーク活動への強力なご支援を、今後ともよろしくお願いいたします。
(日本地震学会ニュースレター第70巻 第NL1号35ページ, May 10, 2017)