連携会員、協力学術研究団体 各位
日本学術会議事務局
平素より大変お世話になっております。
今般、日本学術会議会長談話「有識者懇談会最終報告及び日本学術会議第193回総会を受けて ~より良い役割発揮のための改革に向けて~」が発せられましたので、下記のとおりご連絡いたします。
去る12月20日、昨年8月以来内閣府において開催されてきた日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会(座長:岸輝雄東京大学名誉教授)(以下「懇談会」)は「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」と題する最終報告をとりまとめ、公表した。
1年半にわたり、世界最高のナショナルアカデミーを目指すべきとの期待の下に真摯に議論をいただいた懇談会及びワーキンググループ(以下「WG」)の委員各位に、敬意と感謝の意を表したい。
日本学術会議は、この最終報告において、科学的助言機能の強化、科学に関する各種ネットワーク機能の強化、国際活動の強化、そしてそれらを支えるための事務局機能の強化等、日本学術会議がより良い役割を発揮するための機能強化が今回の改革の目的とするものであることを明らかにした上で、そのための組織のあり方として法人化の具体的な姿を、懇談会の議論の到達点として示されたことについては評価するものである。
日本学術会議は、これまで、日本学術会議がナショナルアカデミーとしての役割を果たすためには、(1)学術的に国を代表するための地位、(2)そのための公的資格の付与、(3)国家財政支出による安定した財政基盤、(4)活動面での政府からの独立、(5)会員選考における自主性・独立性、という5要件を満たす必要があるとの一貫した考えの下に、懇談会における議論に参加してきた。
この間、本年7月29日の懇談会では、独立した自由な学術の営みを代表するアカデミーの活動を守る観点からの懸念点を文書で示したほか、「より良い役割発揮のためのナショナルアカデミーの設計コンセプトについて」(令和6年10月31日日本学術会議幹事会)、「日本学術会議の会員選考に関する方針」(令和6年11月26日日本学術会議幹事会)等の文書により、日本学術会議としての考え方を示してきたところである。
より良い役割を発揮するための機能を強化するためのものであれば法人化を否定するものではないとの立場の下に、学術の本質や科学的助言の中立性確保の必要性を踏まえて議論を尽くしてほしいと、これまで懇談会において繰り返し訴えてきた日本学術会議のこれらの考え方の土台は変わるものではない。
日本学術会議は本日(12月22日)第193回総会を開催し、最終報告に関する議論を重ねた。
総会では、これまで日本学術会議の示してきた深刻な懸念がなお解消されていないという意見、最終報告に対して一定の評価をした上で今後より良い制度設計に向けて具体的な議論を重ねるべきという意見等、多様な意見が出され、真摯な意見交換が行われた。
総会の議論でも示されたように、日本学術会議が説明してきた懸念点の一部については、懇談会及びWGにおける議論の過程でその趣旨が明らかにされ、お互いの理解が進み、最終報告に記載されたものもあり、ここまで関係者間で積み重ねてきた議論には一定の意義があったと考えている。
ただし、今般の最終報告では、日本学術会議がこれまで主張してきた点について反映されていない点がある。
このことは残念であるが、そうした点についても、日本学術会議の主張については最終報告にも明記いただいたところであり、今後、法制化の過程で更なる検討をする余地があるものと考える。
また、法制化に向けて具体的な検討が必要となる論点も残されている。
今後、日本学術会議は、科学的助言機能の強化、科学に関する各種ネットワーク機能の強化、国際活動の強化、そしてそれらを支えるための事務局機能の強化等、法人化を含む改革をより良い役割発揮のための機能強化につながるものとして実現していく。
そのために、日本学術会議は改革の当事者として、具体的な法制化に向けて責任をもって政府と協議していくとともに、改革の実行に当たっては、会員間で議論を尽くしつつ、社会との対話をこれまで以上に進めていく。
そして、日本学術会議が本来取り組むべき活動をさらに推進していくため、「日本学術会議第26期アクションプラン」に基づく改革の取組についても、より一層の実現に向けて進めていく。
令和6年12月22日
日本学術会議会長 光石 衛