会員、連携会員、協力学術研究団体 各位
日本学術会議事務局
平素より大変お世話になっております。
2023年6月15日、第345回幹事会を開催しました。幹事会では、内閣府大臣官房総合政策推進室笹川武室長から、「日本学術会議の在り方の見直しに関する今後の進め方」について説明を聴取するとともに、質疑応答を行いました。笹川室長の説明及びそれに対する梶田隆章会長の発言は以下のとおりです。また、当日の資料は以下URLからご確認ください。
内閣府の笹川でございます。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。今ご紹介いただきましたとおり、学術会議の在り方に関する今後の政府の進め方ということでお話しさせていただきます。
学術会議の在り方の見直しにつきましては、4月20日に岸田総理、それから、後藤大臣から、今国会での法案の提出を見送るとともに、今の政府の案や法人とする案を俎上に載せて、丁寧に議論し早期に結論を得ることとしたい、というふうに発表したところです。これを踏まえまして、内閣府において、具体的な進め方について検討をしてきましたが、この度、後藤大臣の下に有識者懇談会を設けるということにしたいと考えますので、その旨をお話しにまいりました。資料をご覧いただきながら説明させていただきます。
まず趣旨は、学術会議が、学術の進歩に寄与するとともに、国民から理解され信頼される存在で在り続けるという観点から、求められる機能、それにふさわしい組織形態の在り方について検討していただくものでございます。この趣旨の二行目に、経済財政運営と改革の基本方針2023を踏まえ、と書いてありますところの趣旨・意味は、先ほど言及した4月20日の総理の指示のとおり、国の機関として存置したままで透明性を制度的に確保していくという、前回の総会で政府側から申し上げた案、それから、これまでの経緯を踏まえて、主要先進国並みの制度、体制を持った特殊法人などの民間法人とする案を俎上に載せて、丁寧に議論し、早期に結論を得るということでございました。骨太の方針にもそういうことが書かれております。
議論するテーマ、対象は、学術会議の在り方、求められる機能と組織形態の在り方ということですけれども、学術会議が学術の進歩に寄与するということはどういうことか、高い視点から、行政、産業、国民生活に科学を反映させるというのはどういうことか、あるいは学術会議は国民から理解され信頼されていく、そういう存在であり続けるためには何が必要か、そのような観点を踏まえながら、学術に関わる知識、経験を有する方々に集まっていただいて、幅広く議論していただきたい。
以上が趣旨でございます。
次の2. 構成員のところでございます。構成員は、有識者、すなわち広く学術に関わる関係者ということで、いわゆるアカデミアに属する方、経済界の方などを始め、学術に関して広い観点から、あるいは高い知見をもって議論できる方を想定しています。全体で10名程度を考えています。「構成員は、別紙のとおりとする」と書いてありますけれども、具体的な人選についてはまだ調整中でございますので、決定して正式発表するまでは申し上げることができません。ご了承いただければと思います。学術会議側のメンバー、会長などについては、当事者ということもございますので、この懇談会の構成員そのものとは位置付けませんけれども、この懇談会の場に是非お出でいただいて、積極的に議論に参加していただきたい、一緒に議論していただきたいと思う次第でございます。
紙には書いておりませんけれども、スケジュール感についてです。この懇談会については、今週火曜日(6/13)の記者会見で後藤大臣に質問がありまして答えているんですけれども、できるだけ早く速やかに立ち上げて、丁寧に議論して早期に結論を得たい、ということを申し上げました。恐縮ですが、いつから議論ということは、人選も含めて調整中ですので、申し上げられる段階にはございません。できるだけ速やかに立ち上げて、ということだけ申し上げておきます。
同様に、具体的なアウトプットの出し方、あるいはその時期についてもまだ申し上げられる段階にはないわけですけれども、早期に結論を得るようにしたいということに現時点では尽きております。
検討項目でございます。2枚目の紙をご覧いただければと思います。確定的にこういうふうに議論するんだというつもりで書いているわけではございませんが、こんなイメージという感じで想定しています。まずは政府案の考え方と、それについて何が問題だと考えられるのか。これまでの学術会議の活動状況、成果、「より良い役割発揮に向けて」に基づいて先生方が改革を進めていらしたということですので、その進捗状況、そんなことをご説明いただくとともに、海外アカデミーの状況なども確認しながら、議論を進めていくということかなというふうに思っています。これ以上のことについては、まだ立ち上げる前ですので、申し上げられることはないですけれども、学術会議のこれまでの活動の状況ということについては、あるいはその成果ということについては、特に最近政府といくつかやりとりがあったような案件、例えば、いくつか審議依頼させていただいて返していただいたり、あるいは研究インテグリティについて取組をされていただいたり、国際関係業務もいろいろ頑張っていただいているんだと思います。そういったことをご説明いただくのかなというふうに、ここは最後、感想も交えますけれども、考えているところでございます。
紙に戻りまして、3番目の公開等のところです。議事の公開など、運営に関する事項につきましては、最終的には構成員の皆さんの意向を踏まえて座長に決定していただくということになろうかと思いますけれども、当然議事録は作成し、公表していくのだろうと思っております。議事録に名前を付するかというのは、気にされる向きもあるようですけれども、構成員の同意が得られれば、顕名ということでよろしいかなと私は考えているところでございます。
最後に庶務です。懇談会の運営に必要な事務は、内閣府大臣官房総合政策推進室で処理いたしますけれども、当然のことながら、当然なので書いていないですけれども、学術会議事務局にもご協力いただく必要があると思いますし、情報の共有などは、しっかり、きちんと行っていきたいというふうに考えているところでございます。
申し上げられるようなことは、これから立ち上げるという話なのであまりございませんが、以上です。何かあればお伺いいたします。
今年4月の第187回総会で、政府による日本学術会議法改正の動きに対して、「『説明』ではなく『対話』を、『拙速な法改正』ではなく『開かれた協議の場』を」という声明を発出いたしました。声明では、「日本学術会議のあり方を含む学術体制全体の抜本的な見直しのために、幅広い関係者の参画による開かれた協議の場を設けることを求めて」おります。
「開かれた協議の場」での議論の範囲は「日本学術会議のあり方を含む学術体制全体の抜本的な見直し」であるべきだと考えております。いわゆる研究力の低下問題に象徴されるように、日本の学術の在り方には様々な軋み(きしみ)が生じております。人類と社会が直面する近年の諸課題に対応するために、学術の役割はますます大きくなっております。議論の範囲を、学術会議法の改正案かそれとも法人化かという論点にとどめるのではなく、学術が求められる役割を踏まえて、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議の役割を検討することが必要と考えております。想定される論点としては、
このようなものが考えられると思っております。
協議を実りあるものにするために、おそらく委員の数は10人程度にとどめる必要があるかと思います。また、透明性の高い議論の場とするために、さきほどは非公開ということでしたけれども、議論は公開とし、議事録は発言者名を記して公表すべきと考えます。
そして、スケジュールですけれども、議論において、学術が直面する課題について当事者の十分な理解を醸成し、日本の学術体制におけるナショナルアカデミー、つまり日本学術会議の役割について十分な議論が尽くされるためにも、スケジュールありきの運営とするべきではないと考えております。
そして、今回、学術会議法改正案の国会提出を見送り、政府としての学術会議のあり方を丁寧に議論する場を設けるとされたことについきましては、政府と学術の建設的関係を今後に向けて築き、そして発展させていく糸口が維持されたことを意味すると考えております。私たちは今回設置される「議論の場」が学術体制全般について「開かれた協議」の場となることを期待しております。しかし、これらの私たちの考えがすべて満たされない限り、今回の議論の席にはつかないというような頑なな(かたくなな)態度を取るものではありません。しかるべく設定された場には参加して、私たちの考える「協議の場」にふさわしい実質が備わるように努力してまいりたいと思います。同時のそのような「協議の場」となるほう、本日お伝えしたこれらの点につきましても、ご配慮をお願いしたいと思っております。