現在の地震学で期待されている地震の前兆現象について教えてください。
地震は、地下の岩盤での破壊現象で、そのほとんどが、深部で生じる断層運動(ある破壊面を境にした食い違い、高速なすべり)と考えられています。その場合、大切なのは、その面(断層面)上でのすべりを支配する法則(摩擦構成則とよびます)です。
摩擦構成則に関する最新の成果によると、断層面は突然に高速にすべり出すのではなく、ある場所でゆっくりとしたすべりが発生し(その場所を破壊核または震源核とよびます)、それが拡大し、そのすべり量がある大きさ(臨界すべり量と呼びます)を越えたとき高速すべり(地震)に移行することがわかりました。このような、地震前のゆっくりすべり(プレスリップと呼びます)の存在は、岩石実験やコンピューターシミュレーションでも確認されています。
この破壊核形成(プレスリップ)によって生じる地殻変動およびそれに伴う現象が現在の地震学では、前兆現象としてもっとも有望ですが、そのような現象が、大地震の発生前に実際に検出されて、その後地震発生に至った例はまだありません。