会員、連携会員、協力学術研究団体 各位
令和5年9月8日
日本学術会議会長 梶田 隆章
過日9月6日午前、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会の第2回会合が開催されました。
先週行われた第1回会合(令和5年8月29日)では懇談会構成員から、諸外国のナショナル・アカデミーが果たしている役割と存立要件についての理解を共有し、そのうえで日本のナショナル・アカデミーである日本学術会議がどのような役割を担うのかを議論すべきとのご意見がありました。第2回会合では、私から海外のナショナル・アカデミーについて本会議の行ってきた調査について紹介した上で、今回、本会議事務局とともに調査を中心的に担った小林傳司日本学術会議アドバイザー(第一部会員)が、米英独仏各国のアカデミーとの比較を中心とした報告を行いました。
さて、日本学術会議はすでに2003年に各国のアカデミーについて調査を行ったことがありました。また、昨年、本会議の在り方に関する政府方針を検討するにあたって内閣府も調査を行い、本会議事務局もこれに協力しました。本日の報告は、これら先行調査を参考にしつつ、OECD加盟国なども対象に加えて本会議が独自に取りまとめた調査結果に依拠したものです(第2回懇談会配布資料中の資料1~3を参照)。その概要はすでに総会・幹事会等で紹介してまいりました。
資料にもある通り、各国アカデミーは、その歴史的経緯からそれぞれ果たしている役割は異なりますが、大きく以下の6つにまとめることができます。1.栄誉・顕彰機能、2.助成機能、3.普及・啓発活動、4.科学的助言機能、5.国際活動、6.研究機能の6つです。このうち、日本学術会議は、主として、普及・啓発活動、科学的助言機能、国際活動を果たし、それ以外の機能は他機関が担う点に日本の制度的特質があります。本日の議論を通じて、このようなアカデミーの果たすべき役割・機能や学術体制の日本的特質こそ、設置形態などに先立って議論されねばならないという点につき、懇談会構成員の間で理解が一定程度共有されたように感じられました。私たちは、日本の学術体制全般を見直す中で本会議の果たすべき役割とあり方を考える必要性と重要性を繰り返し説いてきましたが、その考えが多少とも理解されたのであれば、大変嬉しいことであると考えます。
また、詳細は近日に公表される議事録に譲りますが、本日の報告を踏まえた議論では、諸外国の事例を参照しつつ、科学的助言のあり方、会員の任期や選考の問題、科学・学術の独立性の意味、等々、多岐にわたる論点を出していただきました。いずれも大変重要なものだと感じました。次回以降、日本学術会議の実際の活動について報告する中でこれらの論点も説明し、「開かれた協議の場」にふさわしい実質を積み上げていく所存です。
前回も申し上げた通り、内閣府のHPには有識者懇談会毎回の資料と議事録が掲載されることとなっており、すでに第1回会合の議事録も公表されています。そこにもあるとおり、有識者懇談会の目的を日本学術会議の設置形態に限ろうとする考え方は公式には維持されており、今後そのような方向での議論が進む可能性も大いにございます。皆様にはぜひこれらをお読みいただき、懇談会の場で何が議論され、何が課題となっているのかを確認していただきたく存じます。引き続き、皆様のご理解を衷心よりお願い申し上げる次第です。