秘密裏に、人為的に大きな地震を起こして、特定の地域に被害を生じさせることはできますか?
地表に被害をもたらし得る地震として、マグニチュード(M)7以上の地震を人為的に起こすことを想定します。この規模の自然地震は、一般に深さ10㎞以深で発生することが多いため、その場所でM7以上の規模の地震を起こすエネルギーを発生させる必要があります。
しかし、以下の理由から、このような地震を人為的に起こすのは現実的ではありません。
(K、S)
深さ10㎞以上の孔を掘るために多くの時間と経費がかかります。地表に被害をもたらし得る地震として、マグニチュード(M)7以上の地震を考えると、この規模の地震に関わる断層は一般に深さ数kmから十数km程度の領域に及ぶことが多く、深部へ到達する掘削が必要になります。
これまで人類が掘った最も深い孔として知られているものは旧ソ連によるコラ半島超深度掘削孔で、深さ約12.3kmです。これは約20年にわたり掘削されましたが、地中が高温であったため技術的に掘削を継続することが困難となり、掘削計画は1992年に停止されました。この計画でかかった費用は不明です。
またドイツの超深度掘削孔(KTB)では1990年代に深さ約9.1kmまでの掘削が行われ、その際の費用は約498~528百万ドイツマルクで、当時の為替レート換算で数百億円規模(約350~480億円)でした。
近年では、中国のタリム油田で「深地塔科1井(Shenditake-1)」という掘削孔が2024年に掘削開始後279日で深さ10㎞に達したとの報告があります。これについても、かかった費用は不明です。(K、S)
深さ10㎞以上の孔を秘密裏に掘削することが困難です。深さ10㎞の孔を掘ろうとすると、高さ数十mのやぐら(海上なら、そのようなやぐらを持つ船:例:ちきゅう)が必要です。そのようなやぐらや船が半年以上(場合によっては、数十年)、特定の場所に存在し続けることになります。このような状況を隠し続けることは困難です。(K、S)
大地震を起こすエネルギーは膨大で、それを用意するのは困難です。
火薬を用いて生じた最大クラスの人工地震は、1947年にイギリス海軍が6700トンの火薬を用いておこなったもので、この時の規模はM4.6と推定されています。核実験によって生じた最大クラスの人工地震は、1971年に米国アラスカ州でTNT火薬換算にて5百万トン近い核弾頭を用いたもので、生じたマグニチュードは6.9とされておりM7クラスの地震に相当します(参照:気象庁『験震時報』第81巻第1号)。
しかし、深さ10㎞以深の孔底で、このような核爆発を起こす技術は確立されていませんし、これだけの核弾頭を秘密裏に準備するのは極めて困難と考えられます。(K、S)