2010年度Awards

公益社団法人日本地震学会 理事会

 日本地震学会2010年秋季大会では、93名の学生の発表がありました。この発表に対して、2010年度日本地震学会学生優秀発表賞選考委員会が組織され、厳正な審査が行われた結果、当委員会より9名の受賞候補者の推薦を受けました。この報告を受け、理事会において、日本地震学会学生優秀発表賞9名を決定しました。

氏名(五十音順) 所属(学年)
「発表タイトル」
浦田 優美 京都大学大学院理学研究科(博士課程2年)
「Thermal pressurizationを考慮した動的破壊過程と間隙水の相変化」
白濱 吉起 東京大学大学院理学系研究科(修士課程2年)
「チベット高原北縁Kumkuli盆地の変動地形」
鈴木 満 筑波大学大学院生命環境科学研究科(修士課程2年)
「深発地震における破壊伝播速度異常」
高木 涼太 東北大学大学院理学研究科(修士課程2年)
「2008年岩手・宮城内陸地震に伴う地震波速度変化の空間分布」
瀧口 正治 京都大学防災研究所(修士課程2年)
「近地強震記録を用いた海溝型繰り返し地震の震源過程の推定と比較─茨城県沖で1982年と2008年に発生したM7の地震を対象として─」
平井 敬 名古屋大学大学院環境学研究科(博士課程1年)
「地震動波形を用いた地震の音の作成法」
平野 史朗 東京大学地震研究所(博士課程2年)
「Off fault stress distribution around dynamic slip pulse on a bimaterial interface with some friction models」
三井 雄太 京都大学大学院理学研究科(博士課程3年)
「非定常な間隙流体圧が断層のスティックスリップ挙動に及ぼす影響─現象論モデルの統合による─」
森重 学 東京大学地震研究所(博士課程2年)
「マントルウェッジ内小規模対流による格子選択配向」

日本地震学会学生優秀発表賞 選考結果報告

2010年度日本地震学会
学生優秀発表賞選考委員会

 日本地震学会2010年秋季大会において、のべ93名の学生が発表者として研究発表を行った。日本地震学会学生優秀発表賞選考委員会は、このすべてを対象として審査・選考を行った結果、9名の学生を日本地震学会学生優秀発表賞の受賞候補者とすることを決定した。本報告の結果は、理事会の承認をもって、受賞決定とする。

(1)審査・選考方法について

 各発表に対して3名の選考委員が、すでに公表されているガイドラインに従って発表態度、発表内容、発表資料の3項目について評価を行った。選考委員は23名(下記)であり、同じ所属機関の学生の発表を審査しないこととした。各委員は11-13件の審査を担当し、それらの審査結果に基づく総合順位の上位9名を受賞候補者とした。

2010年度日本地震学会学生優秀発表賞選考委員会審査委員(五十音順):
浅野 公之、飯尾 能久、井出 哲(委員長)、小原 一成、金田 平太郎、蔵下 英司、纐纈 一起、小菅 正裕、鷺谷 威、佐竹 健治、篠原 雅尚、竹中 博士、谷岡 勇市郎、中島 淳一、馬場 俊孝、林 能成、引間 和人、日野 亮太、深畑 幸俊、古村 孝志、堀 高峰、八木 勇治、吉田 康宏

(2)学生優秀発表賞選考総評

 日本地震学会学生優秀発表賞。本学会として初めての学生の研究発表表彰である。ポスターの前で説明していたら「選考委員」という名札をした人が来て、妙に緊張したというような学生が多数いたのではないかと想像する。この審査・選考に関係のない人には、今年の学会もいつもと同じような地震学会と感じたかもしれない。しかし、全体の発表の2割程度を占める学生の発表が審査の対象になったことは、地震学会にいつもと違う雰囲気を少し付け加えたのではないだろうか。

 この賞の創設は1年以上前から準備していて、前回の学会では模擬審査を行った。私は昨年と今年で同じように審査するつもりで発表を聞いたが、今年の学生の発表は昨年以上に良く準備されていたように思う。口頭発表ではスライドが作り込んであったし、もじもじ話している学生は私が見た中にはいなかった。何より発表時間厳守が徹底されていて、「これで発表を終わります」の声と同時にベルが鳴るというような発表もいくつかあった。あまり神経質になるのもどうかとは思うが、良く準備した結果だとすれば好ましいことである。ポスターも良く準備されていた。昨年までのポスターでは知り合い同士でしか話さなかったという学生もいたかもしれない。今年はポスターで、面と向かって審査される。選考委員は必ずしも専門分野が同じではなく、学生には高度な説明能力が要求された。

 さて審査を終えて選考となるが、23人も選考委員がいる中で、果たして皆の納得できる結果がでるのだろうかという不安があった。選考委員の中にも自分の審査基準が他とずれていたらどうしようという不安を抱えながら審査したという人もいたと聞く。しかし実際の選考作業は想像以上にスムーズに進んだ。委員の意見は概ね一致し、選考委員会は共通の価値観を持つことができたようである。ポスターの評価はややばらけがちであったが、同じような説明を3人の審査委員にするのは困難であり、仕方ないことである。初回ということで基準作りの議論を慎重に行い、最終的に委員の全員が納得する形で今回9名の学生を選ぶことができた。

 この賞は発表の研究内容より技術的側面に重きを置いて選考した。この能力が研究生活の様々な局面で現在まさに必要であり、今後一層重要になるという見通しがあるからである。受賞者の皆さんを祝福するのと同時に、評価は一面のものであることは忘れないでおいてほしいとも思う。また受賞者とそれ以外の上位との差はわずかである。受賞者は慢心せず、受賞できなかった人はあと一歩だったと思って今後の学業・研究に励んでほしい。

2010年度日本地震学会 学生優秀発表賞選考委員長 井出 哲

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