会長挨拶Message from the President

 日本地震学会のルーツは1880年に設立された地震学会まで遡ります。当時のお雇い外国人を中心に設立され、我が国における近代的科学としての地震学が始まりました。その活動は、1891年に発生した濃尾地震を機に設立された震災予防調査会に引き継がれ、さらに1923年の関東地震を契機に設立された地震研究所の活動につながりました。
 現在の日本地震学会の直接のルーツは1929年に発足した地震学会です。その後、戦争による休止期を経て現在まで繋がっています。

 この間、日本の地震学者によって多くの科学的成果がもたらされてきました。
 余震の法則に現在もその名を残す大森房吉は明治から大正期に世界的に活躍した地震学者です。余震の大森則は多くの検証を経て確固たる地位を確立していると同時に、今だにその原因について研究者の好奇心を引きつけ続けています。
 地震が地下の断層運動によって発生することは、1891年の濃尾地震や1906年のサンフランシスコ地震ですでに仮説として提示された学説でしたが、最終的に1963年の丸山卓男(東京大学名誉教授)の論文によって理論的に決着がつきました。その断層運動を物理的概念としてマグニチュードと結びつけたのは金森博雄(カリフォルニア工科大学名誉教授)でした。いまではモーメントマグニチュードとして広く用いられています。
 巨大地震が発生するプレート境界で不思議な低周波地震が発生しているのを見出したのは小原一成(東京大学教授)です。この発見はプレート境界でスロー地震と呼ばれるゆっくりとした滑りの研究につながり、いまではプレート境界における巨大地震発生につながるきわめて重要な過程として理解されるようになりました。このスロー地震もモーメントマグニチュードが考案されていたおかげで定量的に評価できるようになりました。
 金森博雄と小原一成の両氏には、世界的に顕著な業績を上げたとしてそれぞれ第1回と第2回の日本地震学会賞が授与されています。

 このように、過去140年にも及ぶ多くの研究者の研究の積み重ねによって地震学の知見が積み上がってきました。その積み重ねのプロセスの中で、議論や検証に耐えられず捨てられた多くの学説があったことも忘れてはいけません。
 日本地震学会はこのような地道な地震学の知見を積み重ねて行くための場を提供すると同時に、長い議論を経て生き残った地震学の重要な知見を社会に伝える役割を担っています。地震に関わる研究をされている方、地震学の知見を様々な分野に適用をされたいと考えられている方、さらに地震に関する知見を理解し、社会に活かすために周りに伝えていきたいと考えられている方は、ぜひとも日本地震学会に参加して下さい。日本地震学会はそのような方の参加を待っています。

公益社団法人日本地震学会 会長 山岡 耕春

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