2016年度Awards

受賞者:金森 博雄

受賞対象研究

巨大地震の発生機構とその多様性の解明

受賞理由

 受賞者は、巨大地震や全地球的深部構造の解析、複雑系としての地震現象に対する微視的・巨視的側面からの研究、さらには津波、火山噴火、大気と固体地球との相互作用など、多岐にわたる画期的研究で地震学に新時代を開くなど、地球科学の発展に大きな影響を与えるとともに、このような研究から得られた知見を地震災害軽減のために役立てる方法を提唱し、かつ実践している。

 受賞者の画期的業績のひとつとして、東京大学在任中の地震波形の解析による「環太平洋で発生する巨大地震がプレート沈み込みによるものであることの実証」があるが、カリフォルニア工科大学に移動後はさらに地震学の物理的基礎の確立に不滅の貢献をなし続けた。地震の規模に明確な物理的意味を与えたモーメント・マグニチュードMwの導入、複雑系としての震源域へのアスペリティ概念の導入、さらに各地の記録波形のインバージョンにより現実に即した発震機構モデルを求める手法の確立など、その業績は枚挙に暇がない。一方、最新のテクノロジーを駆使して自ら創生・発展させたリアルタイム地震学をさらに高度化させるため、Wフェーズを用いて地震の大きさを即座に解析する手法を開発するなど、地震や津波による災害軽減にも第一級の貢献を果たしている。

 受賞者の研究の基調は「地震現象の物理学」といえるが、様々な自然現象に対し旺盛な好奇心をもち、透徹した物理学的思考に基づいたモデルないし仮説をたて、それを巧みな解析によって実証するという、モデル・理論・実証を通した地震学分野のオールラウンドプレーヤーとして、受賞者は多くの教科書に引用される数多くの国際的な業績を残し、世界の地球物理学をリードし続けてきている。

 米国移住後も、多くの日本人地震学徒を招き、またしばしば日本を訪れ、研究協力・後輩育成に大きな貢献をしていることも特筆すべき点である。事実、現在の我が国の第一線地震学者の殆どすべては直接・間接に受賞者の指導を受けているといっても過言ではない。

 国内外におけるこれまでの功績に対して、米国地震学会賞、米国サイエンスアカデミー Arthur L. Day 賞、カリフォルニア州科学・工学賞、朝日賞、米国地球物理学連合 Walter H. Bucher メダル、日本学士院賞、文化功労者賞、京都賞、瑞宝重光章、米国地球物理学連合の最高位である Bowie メダルを受ける一方、米国地震学会長 および全米研究評議会地震学委員会議長を歴任するなど、わが国のみならず米国および国際的な地震学界においても、地震学研究の発展を推進する重責を果たしてきている。

 以上の理由から、受賞者は近代地震学の創生と発展に著しく貢献しており、2016年度日本地震学会賞を授賞する。

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