伊藤久男(地質調査所地震地質部)
1. はじめに
2. 観測点・観測機器と集録システム
典型的な観測点である池田観測点(大阪府池田市緑丘、工業技術院大阪工業技術研究所
構内)の構成を図1に示します.
池田観測点では坑井内に3成分歪計・3成分速度計・3成分加速度計からなる観測装置を
設置してあります.また地上にも強震計を設置してあります.池田観測井の地質構造は地
表から深度664 mまでは未固結の洪積層である大阪層群、664 m以深は丹波層(中・古生
層)の基盤岩です.従って坑井内強震計は基盤岩である丹波層中に、地表強震計は大阪層
群上にあることになります.
センサーの仕様は以下の通りです.
坑井内加速度計:
日本航空電子工業(株)JA-5VC
測定範囲:±2,000 gal
形式:サーボ式加速度計
地上強震計:
アカシ製MDII
測定範囲:±2,000 gal
坑井内・地上強震計の記録はトリガーモードでA/D変換され、つくば市の地質調査所へ
送られます.トリガは地中速度計により判定され、地表はそのトリガをもらって記録され
ます.REFTEK社の集録装置でサンプリング周波数250 Hz、サンプリング精度24ビット
でA/D変換されます.伝送の都合から現状では、1日1回現地から地質調査所へ送られま
す.残念ながら現状ではリアルタイムの伝送にはなっていません.地質調査所で伝送され
た地震波形データはCD-ROMに焼かれ、保存されています.
3. 観測例
図2に1999年2月12日3時23分に京都市南部に発生した地震(深さ約20 km、マグ
ニチュード4.4)の記録例を示します.図中BS, BV, BA, SAはそれぞれ坑井内歪計、坑井
内速度計、坑井内加速度計、地表強震計の記録を示します.
5. おわりに
13観測点に坑井内加速度計が設置されいますが、坑井内・地表ともに強震計が設置され
ているのは池田観測点のみです.しかし、あらたに地表強震計を設置することは基本的に
は可能と思いますので、地表への強震計設置に興味のある方も、下記までご連絡下さい.
参考文献
佃栄吉・高橋誠・佐藤努・松本則夫・伊藤久男、地質調査所における地震予知地下水観測
網ー近畿地域の地下水観測井の新設ー、地質ニュース、505, 11-15, 1996.
連絡先:
伊藤久男
〒305-8567 茨城県つくば市東1-1-3
工業技術院地質調査所地震地質部
Earthquake Research Department, Geological Survey of Japan
Tel 0298-54-3757 Fax 0298-55-1298
E-mail g0193@gsj.go.jp