科学技術庁防災科学技術研究所 福山英一
はじめに
データ収集方法
観測はすべて横坑内において行われており、地震計
台座上にSTS-1型広帯域地震計3成分とVSE311R速度型
強震計3成分の計6成分が設置されている。データは
Q680データロガーにより5〜10秒の時間おくれでデー
タセンターに常時転送される。また、バックアップと
して約1日半の間データはデータロガーに保存され、
通信障害等で実時間転送データが欠測した場合、手動
で欠測データを復旧することが出来る。データはTCP/
IPプロトコルを用いたソケット通信によりデータ転送
を行っている。データサーバ側では、デーモンプログ
ラムにより、通信状況を監視するとともに、データ転
送に障害が発生した場合は監視デーモンプログラムが、
自動的に障害の発生したプロセスを再起動し、障害復
旧を試み、復旧しない場合は、電子メールにより管理
者に障害を通知する。この仕組みにより、実時間デー
タの障害率は全観測時間の0.1%以下であり、故障など
による波形の欠測状況は全観測時間の0.01%以下であ
る。観測点によっては、約2年以上もの間、障害無く
連続して稼働しているところもある。
データの種類とそのアクセス方法
広帯域地震計(STS-1)のデータは、24bitのA/D変換
器で量子化され、digital filterで処理された後、以
下のデータを保存している。80Hz連続データ(HHZ,HHN,
HHE)、20Hz連続データ(BHZ,BHN,BHE)、1Hz連続データ
(LHZ,LHN,LHE)、0.1Hz連続データ(VHZ,VHN,VHE)、0.0
1Hz連続データ(UHZ,UHN,UHE).STS-1地震計は約0.005m
/sを越える入力に対して非線形的な応答をし、0.01m/
sを越える入力に対してクリップするため、これらの
入力を越える地震波形を扱う際は、併設されている速
度型強震計(VSE311R)を用いる必要がある。VSE311Rは
STS-1地震計と似た特性(地動速度に対して平坦な応答)
をするが、0.4m/sあたりでクリップする特性となって
いる。今年度の観測点より、VSE311Rの後継機である
VSE355Rを用いている。VSE355Rは、低周波ノイズ特性
が改善され、しかも、最大速度入力が2m/sと、従来機
の5倍となっている。速度型強震計のデータも、広帯
域地震計と同じA/D変換器で量子化され、digital
filterで処理されている。利用可能な成分は80Hz連続
データ(HLZ,HLN,HLE)、20Hzトリガーデータ(BLZ,BLN,
BLE)、1Hzトリガーデータ(LLZ,LLN,LLE)である。
これらのデータはすべてFREESIAのWorld Wide Web
のページ(http://argent.geo.bosai.go.jp/freesia/
index-j.html)より取得可能である。現在、ディスク
スペースの制限により、提供できるデータは、過去2
年分強程度であるが、ディスクの増強により、過去3
年分のデータは自由にアクセスできる体制を整える予
定である。データ取得のためのプログラムは、2年以
上前に書いたものであるが、利用者の使い勝手がよい
ものとはお世辞にもいえない。近じか、より簡便にデ
ータを取得できるよう、データ取得プログラムの更新
を行う予定である。また、CDROMによるoff-lineデー
タ提供の体制も同時に整える予定である。
最後に
この広帯域地震データを用いて、防災科学技術研究
所では、気象庁により、電子メールで配布される緊急
震源情報をもとに、全自動でモーメントテンソルを決
め、即時にWorld Wide Webおよび電子メールにて、そ
の結果を公開している(福山・他、1998)。また、結果
の信頼性を向上させるために、手動による再決定を1
日程度の遅れをもって行っている。Webによる結果及
び電子メールによる結果の購読は、上記に紹介した
FREESIAのページからたどれるようになっているので、
御利用いただければ幸いである。
なお、上記のデータを利用するに当たっての利用条
件は該当するWeb pageに記されているので、最低限の
マナーとして、遵守していただければ幸いである。
参考文献: 福山英一・石田瑞穂・堀貞喜・関口渉次・綿田辰吾 Freesia Projectによる広帯域地震観測, 防災科学技術研究所研究報告, 57, 23-31, 1996. 福山英一・石田瑞穂・Douglas S. Dreger・川井啓廉 オンライン広帯域地震データを用いた完全自動メカニズム決定、 地震 第2輯, 51, 149-156, 1998.