杉田秀樹(建設省土木研究所耐震技術研究センター防災技術課)
1.はじめに
2. 一般強震観測
施設の地震応答の観測は、表1に示すように、道路施設、ダム施設、河川施設を中心に実施している。施設ごとに異なる振動特性を把握するため、観測点の配置は写真1に示すように、以下の考え方によっている。
● 道路施設−観測点の大部分は既設橋梁とその周辺地盤であり、他に既設沈埋トンネルや長大橋梁建設予定地点も含まれている。既設橋梁では橋梁周辺の地表面と橋脚天端、橋台天端、橋桁での観測を標準としている。
● 河川施設−観測点の大部分は堤防であり、他に堰や水門が含まれている。堤防では周辺の地表面、工学的基盤、堤体天端での観測を標準としている。
● ダム施設−ダムの左岸・右岸の岩盤上とダム本体の底部、中段、天端での観測を標準としている。
● 下水道施設−処理場・ポンプ場の躯体部と周辺の地表部のほか、少数ではあるが管路施設にも強震計が設置されている。
(b)河川堤防の観測点配置
写真1 各種施設における観測点配置
一般強震観測で用いられている強震計は、整備時期や観測点管理者によって異なり、SMAC型強震計、電磁式強震計、普及型強震計に大別される。普及型強震計とは、建設省技術評価制度「地震動の加速度測定に用いる普及型強震計の開発(1981)」で評価を受けた強震計とその改良型強震計の総称である。型式別の箇所数割合は1997年現在、SMAC型強震計が37%、電磁式強震計が24%、普及型強震計が39%である。初期のSMAC型などアナログ記録方式の強震計は、今後普及型強震計などディジタル記録方式の強震計に更新される予定である。
3. 高密度強震観測
9地区の観測網はそれぞれ、数10〜数100m間隔で設けられた9〜14箇所の観測地点により構成されている。土木研究所には観測網全体の管理を行うワークステーションが設置されており、ISDN回線を通じた遠隔操作によりデータの取得や観測施設の点検を行うことが可能である。
各観測地点には、観測小屋と1〜6台の換振器が設置されている。換振器は当該地点の地盤条件に応じて様々な深度に埋設されているが、このうち1台は地震動の地表面に沿う面的な分布を把握するために地表面下2mに設置している。また、表層地盤の影響を受けない地震動を観測するため、各地区について1地点は工学的基盤面に換振器を設置している。一例として、相良地区における代表断面の地盤構成を図1に示す。
観測小屋には、通信制御部、記録部、GPSアンテナ、避雷針など観測装置一式が収納されている。換振器で検出されたデータは観測装置内のFLASHメモリに記録されると同時に、警報とともに土木研究所のワークステーションに自動的に送信される。換振器としては測定加速度範囲±2000gal、測定周波数範囲0.1〜30Hzの3成分サーボ型加速度計を用いている。観測装置のA/D変換分解能とサンプリング周波数はそれぞれ22bit、200Hzであり、FLASHメモリには最大45分間(9成分収録時)のデータを記録することができる。
4. データの提供
公共土木構造物の波形記録は土木研究所で補正処理を行い、応答スペクトル等の解析結果と併せて彙報として毎年とりまとめ発刊している。現在1993年分までと兵庫県南部地震時の記録をまとめており、さらに1992年以降の彙報については利用の便を図るためデジタルデータを納めたFDを別途用意している。
なお、先述した地震計ネットワークでは道路、河川沿いの最大加速度、SI値、波形記録が得られる。これらの観測情報は施設管理者の初期活動に活用されるほか、ウェブページ等による提供も別途検討されている。
参考文献
1) 建設省土木研究所:土木構造物における加速度強震記録(No.1-22)、土木研究
所彙報、1978.3-1998.1
2) 横山、田村、杉田、本田、千葉:高密度強震観測施設の概要、土木技術資料、V
ol.39-9、1997.9
3) 杉田:リアルタイム地震対応を目指した地震計ネットワークの整備、土木技術
資料、Vol.40-2、1998.2