強震動委員会設立の趣旨


仮称「強震動委員会」について

                       京大防災研 入倉孝次郎
                       鹿島小堀研 武村 雅之
                       東大地震研 飯田 昌弘

  仮称「強震動委員会」は1月23日の第4回将来検討委員会で、日本地震学会の社  
会的貢献を目指す活動の一つとして設置をすすめてゆくことになり、3月27日の評  
議員会、28日の総会で、設置が正式に認められました。その間、2月27日に強震  
動に関する研究者を中心に関連の皆様にお集まり頂き、設立のための第1回準備会を  
開催し、25名の方々に参加して頂きました。その際、代表を入倉孝次郎、幹事を武  
村雅之、飯田昌弘として、設立の準備をすすめてゆくことが合意されました。
 我々、代表、幹事は総会での正式承認を受けて、学会員の皆様にさらに広く同委員  
会の設置の趣旨を御理解頂くために、以下に第4回の将来検討委員会に提出いたしま  
した設置提案書の全文を掲載するとともに、第1回準備会の議論を踏まえて、第2回  
準備会および第1回強震動委員会を以下の日程で開催することをお知らせいたします  
。前回の第1回準備会にも増して多数の方々の御参加よろしくお願いいたします。当  
日は先ず第2回準備会を開催し、皆様のご意見を頂き、今後の同委員会の基本方針を  
検討した上で正式に強震動委員会を発足させ、同時に第1回強震動委員会を開催した  
いと考えております。

第2回準備会(第1回強震動委員会)開催日時・場所
1996年5月31日(金)15:00ー17:00
於 東京大学地震研究所第1輪講室124号(1F)
尚、この件についての問い合わせ先は以下の通り
鹿島小堀研究室 武村雅之(Tel.03ー5561ー2111)
E−mail takemura@krc.kajima.co.jp

第4回将来検討委員会資料

  仮称「強震動委員会」の必要性について


 阪神淡路大震災が提起した問題点の一つは、このような大被害をもたらした強震動  
を観測する体制が日本では極めて貧困であったことである。地震後日時が経過すると  
ともに、震災復興のための施策や各地域における地震に強い街づくりを進める上で、  
今後予想される大地震に対してどのような強震動が発生するかは極めて重要な課題と  
の認識が深まりつつあり、強震動予測は単なる学術的意義に留まらず、社会的要請と  
もなっている。
 このような要請に答えるために、日本建築学会や土木学会ではそれぞれ独自に委員  
会を設け「設計用地震動の推定について」検討をすすめている。しかしながらこれら  
の委員会のメンバーは工学的立場の研究者が多く、検討の過程で地震学的な最新の成  
果が必ずしも考慮されない場合がある。強震動推定のための重要なファクターである  
震源過程や複雑な伝播媒質の速度構造やQ値の影響等がそれに当たる。このため、こ  
れら他学会のメンバーからも日本地震学会の奮起を促す声が強い。強震動予測は地震  
学における成果が合理的な形で社会に還元されるための重要課題の一つである。
 このような点から従来の日本地震学会を考えるとき、日頃から研究者間で上記の問  
題について十分な議論がなされてきたかはなはだ疑問である。なるほど議論の場は、  
最低年2回の大会があり、他学会からもうらやましがられる位に我々の学会での議論  
は活発であるが、その範囲はあくまで自然科学の領域での個々の問題に限られている  
。我々が社会的に求められていることは、先に述べたように自然科学的な知見を総合  
し現実の例えば耐震設計や防災等にどのように生かしてゆくかという点であることを  
忘れてはならない。
  日本地震学会に所属する強震動研究者はもちろん、学会内での関連分野の研究者も、
このような我々の学会が果たすべき社会的役割をわきまえ、自らの資質を向上させ、
社会に対し自由中立な立場から適切な助言や提言を行ってゆく必要がある。このため、
このような問題について継続的な議論をすすめる上で「強震動委員会」の設立は重要
な意味をもつものと考えられる。委員会の組織、開催頻度、設置期間等の詳細は、別
に準備会を設けて検討するとして、考えられる活動の内容は以下の通りである。  

(1)設計用入力地震動評価に関する土木、建築、機械等の各種の動きについての情報  
 交換と対応についての意見交換。
(2)学術会議の地震工学研連、地震学研連等の代表委員のサポート
(3)大地震発生時の余震観測、被害調査等についての相互連絡と報告書作成
(4)強震地震学についての一般向け解説書作成
(5)テーマ別のシンポジウム開催
(6)関連他学会との連絡調整(例えば、JEES、WCEE、IASPEIなどの対応)
(7)個々人の研究成果についての討議

 先に述べたように同様の趣旨の委員会は既に日本建築学会(地盤震動小委員会)、  
土木学会(地震荷重小委員会)等にあるが、それらの委員会は構成メンバーが工学者  
を中心としているために主たる対象領域が地盤の問題に偏りがちである。このような  
点から考え地震学会としては震源過程や地下構造に関する研究者も含めた委員会の構  
成を考えるのが好ましい。

強震動委員会のページに戻る