FAQ 2-5. 前兆現象の発生メカニズムの解明は必要か?(2015年9月修正)FAQ

質問

地震予知を行うために、地震の前兆とされる現象のメカニズムを解明する必要はあるのでしょうか?

回答

ある現象の検出に基づく地震予知の手法が、十分な数のデータによって確立・検証されていれば(すなわち経験則として確立されていれば)、地震予知は可能なはずですから、地震の前兆現象のメカニズム解明は、地震予知にとって必ずしも必要ではありません。しかし、以下の理由で地震予知に関する経験則の確立には時間がかかると考えられます。

被害をもたらすような大地震については、その発生頻度が低いため(M7クラスなら日本周辺で平均して1年に1度程度)、多数のデータを取得することが困難です。よりたくさん起こる小さめの地震(M5クラスなら、日本周辺で1年に平均して50~100回程度は起こる)で仮に経験則ができたとしても、前兆現象のメカニズムがわからない以上、その手法をより大きな地震に適用してよいかどうかの判断をするためには、結局大地震を経験することが必要となります。

このような背景があるため、経験則の確立とそれに基づく地震予知の実現を目指すよりも、その現象の発現メカニズムの解明に努力したほうが、 結局は実用的な地震予知の近道だと多くの地震学者は考えているのです。(K、H、M)

補足1

何百ものデータから経験則が確立され、それが何百ものデータから検証されれば、経験則として、ある程度は予測に役立てることができます。実際、地震の規模別頻度分布の特徴を示す Gutenberg-Richter則(G-R則)も、余震発生率の時間変化を示す改良大森公式(およびそれを高度化したETASモデル)も、経験則ですが、余震の発生確率予測の根拠として使用されています。(M)
余震の発生確率予測について、詳しくは、地震調査研究推進本部の計画と予算⇒委員会報告書⇒地震調査委員会関係報告書⇒余震の確率評価手法についてをご覧下さい。

補足2

地震の数とマグニチュードとの関係については、防災科研による「地震の基礎知識とその観測」の、第1部の1.2「マグニチュード」の所の図1.6とその前後により詳細な説明が載っています。なお、上記ホームページは、地震の基礎知識と観測について詳細に解説されたもので、もし、可能であれば全体を読まれることをおすすめします。補足1に示したG-R則や改良大森公式についても説明が載っています。

補足3

地震は毎日無数に発生していますので(FAQ1-5参照)、(地震とは全く無関係な)何らかの観測データに異常が出た後でも、かならずどこかで地震が発生します。いくつかの偶然が重なるとその観測データと地震との間に何らかの因果関係があり、そのデータに基づく予知があたっているように見えることがあります。予知が当たったかどうかは、予知する地震の規模・場所・発生時間の幅をどのように定めるかに依存しますから、相当の事例を重ねても、その手法が本物かどうかの判断がつかないことがあります。これは過去の地震予知研究において地震学者が学んできた苦い経験です。(K)

補足4

たとえば、最近話題になっている地震前の電磁波等の異常を例にとってみましょう。電磁波には、雷や太陽活動の活発化(いわゆる磁気嵐)といった自然に原因のあるものに加え、自動車・工場・携帯電話・パソコン・道路工事・建設工事等の人間活動に付随する多数の発生源があります。そういった、明瞭な発生源に対する吟味が不十分なまま、電磁波等の発生源かどうかもよくわからない地震に、異常の原因を求める研究者に地震学者は危うさを覚えるのです。すべての電磁波等の発生源を吟味することは実際問題として難しいでしょうから、検証可能なメカニズムを示すことを地震学者は求めるのです。FAQ2-10も参考にしてください。(K)

補足5

十分なデータ蓄積を待たずに、応急的にそれまでの経験則から予知を実施することも場合によっては意味があるかもしれませんが、責任ある機関(例えば政府や自治体)がそのような予知情報を出して、それがはずれた場合には、予知情報を出した根拠を問われ、それが説得力を持たなければその機関の責任が追求されることになります。十分なデータに基づく経験則か、原理が明らかになっている法則を用いなければ、責任ある機関が予知情報を出すことはかなり困難です。(M)

ページ最上部へ